講座
シヨツクの医学と手当
渋沢 喜守雄
1
1群馬大学
pp.6-16
発行日 1956年6月15日
Published Date 1956/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910993
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1.シヨツクとは
末梢の循環に障害があつて,その結果,グロツキーになつたような状態をシヨツクとよぶ。末梢循環障害というのはわかりにくいかもしれない。ふつう一番多くみるのは,体をながれる血液の量—つまり循環量が不足しておこるシヨツクで,血管床の容積に比してその中にある血液量が少くなるような場合であるともいうことができる。手術で急に血液を失うということになるし,ヤケドで体液が熱傷面にたくさん失われても結局は循環量がへる。また胃癌などでしきりに胃内容を吐いても循環量がへる。これなどは主として水分(一部電解質も)がなくなるから脱水とよんでいる。脱水は外科ではシヨツクの有力な原因になる。
グロツキーというのはよい表現ではないが,すつかり打ちひしがれたように精気なく,手足は冷く汗でぬれ,脈がよわく触れにくく,数が多い,意識にはつよい障害はないが自発的に物事をなす力がないという程のことである。
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