講座
精神障害者の治療看護(2)—精神科看護の実際
三重野 正彦
1
1国立肥前療養所
pp.27-30
発行日 1958年12月15日
Published Date 1958/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910747
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前回は精神科看護の特殊性と看護の道徳性について述べましたが,今回は私たちの経験と看護の実際とを述べてみます。
私たちは昭和31年5月ごろから次第に患者への心の鍵を捨て,更には格子や鍵にたよる看護をやめて開放的な看護に努力して来ました。今日どうやら全看護者が心の鍵を捨て,真に患者を中心とした患者の治療のための道徳的看護ができ上がり,施設も格子や鋳が次々に除かれ,350名の中300名の患者が格子のない病棟で生活指導,作業療法などを受けています。退院の数も急に増し,開放的管理であることや電気シヨツク療法を全く行つていないことを聞いて外来を訪れる者が次第に増して来ました。そしてこの2年間,私たちが体験し悟ることができましたことは,以前私どもが意識的にしろ無意識的にしろ,精神病者には止むをえず必要だと考えて持つていた心の鍵は不必要だつたということ,そしてこの心の鍵や鎖がかえつて患者の症状を悪化させ,恢復を遅らせていたということです。
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