特集 老人病の知識と看護
老人の生理
簑島 高
1,2
1北海道大学
2東京女子医科大学
pp.12-19
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910438
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I.緒言
老人とか老年者とか云うのは外貌上からのことで,暦の上の年齢からではない。然し人間の身体の発育,成熟及び退縮の過程は遺伝,環境,栄養などの因子によつて支配されるので,老化現象の現われる個々の器官とその現われる速度が著しい個人差を示す。従つて老年を客観的,具体的に把むことは難かしいから,一応は暦年的に,ある年齢層を老年層と云うより仕方がない。日本の医学では従来60歳以上の人を老年者として取扱つているので,此処に一線を引いて,本稿でも60歳以上の人を老年者とする。この老年層にも60歳の人と80歳の人とでは構造上及び機能上可成りの開きがあることは当然である。昭和30年の統計で見ると日本人の0歳の平均余命,即ち平均寿命は男子64歳,女子68歳で寿命は年々延びて来ているから,老年者の暦年的の取りきめも高齢の方に移動するものと思われる。
本稿では老人の生理を主題とし,之と関連ある解剖学的,組織学的,生化学的変化を併せて記し,最後に精神機能に言及したい。
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