講座
患者の観察—顔つきからみた内科疾患
渡辺 良孝
1
1東京厚生年金病院内科
pp.200-210
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910338
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視診とか触診とかは,だんだん医学が進むにつれて等閑にされて来ましたが,なかなか大切なものです。私の卒業した学校の小使さんに小宮さんと云う人がいました。この人は今でも時々想出して驚くことは一回の観察でよく患者の診断名を当てゝしまいました。
そのため我々が学生であつた頃,試験が間近くなると何も解らないので,よく小宮さんに内緒で病名を教えて貰い色々と検査をして見ると成程,彼の云う通りの病名で,之を教授に診断して頂くと正に当つていたので,我々仲間から一応,珍重がられ尊敬されたのも無理もありません。それが糖尿病とか癌とかどうしても検尿や触診,その他,専門的な診断技術によつて確めなければならないようなものでも,既往症も聞かず,唯“感”の力で比較的正確に見当をつけていたので,どうして解つたのか不思議でなりませんでした。
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