講座
新しい病院〔I〕—建築
伊藤 誠
1,2
1関東労災病院
2東京大学建築学科吉武研究室
pp.6-11
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910157
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最近数年の間に,私たちの知つている限りでも随分たくさんの新しい病院がたてられてきました。それらは進んだ技術をいろいろと取入れて,ともかく従来のものよりはすぐれた点を数多くもつており,その外観だけでも明るく気持のよいものです。こゝに掲げたいくつかの例は,その中でも代表的とされているものの一部です。格式ばつていかにも親しみにくかつた従来の鉄筋コンクリート病院や雨風に傷めつけられて見るからにみすぼらしい姿をさらしている木造モルタルの病院にくらべると,格段の進歩と言えましよう。このように日本の病院が次々と立派になつていくことは,直接医療にたずさわつている人々だけでなく,国民全体の大きな喜びといわねばなりません。しかしながら日本の病院建築は手放しで喜んでいりれるほど楽観的な状態にあるのでしようか。誰でもすぐに思い当ることですが,現状はそれほど単純ではなさそうです。そこでどのような点に問題があるのかを考えてみましよう。
先ず第一に気がつくことは,国全体を通して眺めたとき,医療施設が極めてアンバランスだと言うこと。それは位置的にみても,建物や設備の程度についても言えることです。
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