ホスピタルトピックス 建築設備
病院建築の高層化
伊藤 誠
1
1千葉大学工学部
pp.95-96
発行日 1965年8月1日
Published Date 1965/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202649
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東京市立江古田療養所以来の長い歴史を歩んできた国立中野療養所の本格的な改築工事が,いよいよ始まった。これで,なうての老朽施設も耐震耐火構造の近代的な病院に生まれかわることになる。しかも,高さ制限の緩和を含む最近の建築基準法改正の動きを反映して,地下1階,地上10階という壮大な規模である。多分,実現するものとしては,現在のところ最高の病院であろう。そのできばえを期待したい。しかも,このような高層化の傾向は,今後ますます強まっていくに違いない。この2倍ぐらいの高さのものを計画している病院もあると聞く。
ところで,この傾向に関連して気になることがある。そのひとつは建設費のことである。高層にしながらも,建築的にある水準を確保しようとすれば,当然,従来の3〜4階程度の場合と同じ坪単価ではおさまるはずがない。たとえば,窓ひとつとりあげてみても,3階と10階もしくは20階とでは,風圧が全然ちがう。したがって,気密性のより高い窓サッシュを使わなければ,すきま風の問題などで支障は目にみえている。この点,従来の大部分の病院が採用しているサッシュは,都心のオフィスビルなどに比べて,格段に性能の低いものであった。慣例的に認められてきた乏しい坪単価ではいたしかたのないことであったし,またそれほど高い病院もなかったから,事実さほど問題が起こらなかった。
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