講座
健康保険のしくみ
山本 正淑
1
1厚生省保健局庶務課
pp.49-53
発行日 1956年7月15日
Published Date 1956/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910148
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今年の3月から4月にかけて全国的に保険医総辞退というさわぎがおこつて世間で大きくとりあげられた。何故このさわぎがおこつたかを,総辞退の医師側にいわすと所謂新医療費体系に反対であり,健康保険法の改正に反対であるために総辞退という行動に出たのだと主張している。ここでことわるまでもなく所謂新医療費体系と称せられるものは,簡単に云えば健康保険の診療報酬支払の為の点数表の大改正を云うのであつてこれも健康保険の問題である。又健康保険法の改正を審議してきた国会においては,健康保険の赤字問題を中心にして,国民の医療保障問題が政治論議の課題となり,政府は昭和35年に完全実施を期して国民皆保険を実行するという政策を明らかにした。
社会保障の課題は勿論医療保障のみではない。今後の大きな問題の一つには老齢保障があり,その構想もねられているが,どちらかといえば今日の段階では医療保障問題を解決することが先決課題であり,医療保障といえば,社会保険制度として歴史的に最も古くそのなか味もおゝむね充実し,而もここ数年来保険財政面で運営に苦しんでいる健康保険をとりあげて問題点を検討してみることが,今後わが国の医療保障制度はどういう展開を示すであろうかを推測する手がかりとなろう。
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