特集 戦後十年最近の医学と看護はどう変つたか?
精神病治療の進歩
菅 修
pp.74-79
発行日 1955年10月15日
Published Date 1955/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909936
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精神病はおよそ人類の歴史始まつて以来ある病気であるが,これほど誤つて取扱われたものはなく,又その治療法も近代に至るまで像とんど見るべきものがなかつた。人々はその怪奇な症状に眩惑されて,或は驚き怖れ,或は侮蔑嘲笑するだけで,本気にこれを治療しようとしなかつた。この風潮は現代に於いてもまだ人の心から完全に拭い去られてはいない。
近世になつて,世界各地の医師は,こを治療すべく非常な努力を払つて来たが,しかし元来本病が難治である上に,他の病気と違つて患者自身が自己の病気を認識せず,自ら病気を治そうとせず,医師や看護員の治療行為に協力せず,時々見当のつかない異常行為を示す等のことがあるため,医療従事者はその力の全部を治療に集中することが出来なかつた。そしてその力の少からずのものは,精神障害による事故防止に向けられた。
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