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ニュージーランド見聞記
内野 仙一郎
1
1厚生省
pp.23-25
発行日 1955年9月15日
Published Date 1955/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909909
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女性の天国
ニュージーランドにつくかつかないかに肝臓を悪くして,その滞在は私には苦しいものだったが,世界でもつとも社会保障制度の発達した国であるニュージーランド,いわば病人の天国に来て,病気をして苦しんだ話をするのでは一寸皮肉になるだろうから,若し私が外国人でなく,おまけに男性でなく女性であつたとしたら全くこれほどの天国はなかつたろうにそれは運が悪かつたとあきらめて,その天国ぶりをすこし報告してみよう。
女性であつたらというのは,例えば,電車にしても,女の乗る箱と男の乗る箱は別になつていて,女の方は,椅子が皮張りで窓にはガラスがちやんとはいつているが男の方は木の椅子で乗降口の窓にはガラスがなく吹きさらしである。家庭に於ける主婦の権威は実に嚴然たるもので,事実,よく読書もしているし,見識も高くて,尊敬に値する。女中さんと云うのも日本で想像される姿とは全然異なつて,金の指輪をはめている位で,家政を手伝うのもはつきりした時間制で,時間外の勤務には高い手当が与えられる。
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