講座
老人性慢性疾患とその看護について
吉利 和
1
1東大
pp.6-11
発行日 1955年9月15日
Published Date 1955/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909906
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
さいきん,老人医学の進歩とともに,平均寿命の延長ということのほかに,老人をいかにして気持よく余生を送らせうるか,あるいは何らかの形で社会における存在の意義あらしめるかという,老人にとつて本質的な問題が脚光を浴びるようになつて来た。しかしわが国の現状では,老人の労働意欲を高めることに対する施設は急速にはのぞめない。養老院はいぜんとして単に收容施設であるにすぎず,いわば行きどころのない人のやむを得ず入るところとなつている。こゝでは,老人にとつては,個人として宗教に慰めを求めるといつたようなことを除いては,何ら積極的に老人の生活を豊かにせんとする方向は見られない。こゝでは,老人は一日一日をたゞ無為にすごすことになる。そして,結局さいごは,いわゆる老人病といわれるものに罹つたときの悲惨さを思うのみである。この意味において,単に老人の健康を維持するということのみでなく,やはり老人病患者に対するあたたかい考慮が必要となる。
老人病といわれるものは数多くあるが,その多くは慢性の経過をたどるものである。そして,すべての老人に必然的にあらわれる生理的なものと,真の疾患とのあいだの区別がはつきりしないことが特徴である。以下それら老人に多い慢性疾患と,それらの看護につき注意すべき事を述ておきたい。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.