2頁の知識
ソーク・ワクチンについて
北岡 正見
1
1予研リツケチアウイルス部
pp.48-49
発行日 1955年7月15日
Published Date 1955/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909875
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ソーク・ワクチンという言葉は本家のアメリカでも用いられ,わが国でも新聞紙上にそのまま用いられている。しかし,これはソーク博士が改良して作つた小児マヒワクチンのことで,アメリカでもソーク博士小児マヒワクチンと書くのが普通であるが,それがアメリカ式に縮められて単にソーク・ワクチンとなつたものである。
伝染病の中には,一度罹つて治ると一生涯免疫となる病気がある。そんな病気には人工的に免疫さえすれば,予防できるわけである。それにはまずその病原体を分離発見することが先決問題である。幸いにも小児マヒは,一度かかつて治ると二度と罹らない病気である。つまり免疫を獲得するのである。ところが一度小児マヒに罹つたものでも稀ではあるがまた小児マヒに罹ることが解つて来た。しかし,それは小児マヒに一度だけかかつたのでは充分な免疫にならないのではなく,丁度,同じ赤痢を起す赤痢菌の中にも免疫学的に異なる色々の種類の菌がいるように,小児マヒを起す病原体にも免疫学的に異なる三つの型があることが明かとなつた。つまり一型の小児マヒ病原体に免疫となつても,他の二型の小児マヒには免疫となつていないから,二型の病原体で再び小児マヒにかかることが明かとなつた。従つて全部の型,即ち三つ型,のいずれにも免疫とならなければ,小児マヒに対する完全な免疫にはならないのである。
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