特集 ポリオの疫学(その1)
総説
1960年の長岡市におけるセービンワクチン投与試験について
下条 寛人
1
,
曾田 研二
1
,
中野 稔
1
,
多ケ谷 勇
1
,
北岡 正見
1
,
小柴 五郎
2
,
小見 義衛
2
,
元川 厚平
2
,
大島 きよ
2
,
上村 伯太郎
3
,
栗原 貞次郎
3
,
川瀬 清
,
渡辺 健
4
1国立予防衛生研究所
2長岡市衛生課
3長岡保健所
4長岡日赤病院
pp.67-75
発行日 1962年2月15日
Published Date 1962/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202489
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1960年4月から同年6月にわたって,新潟県長岡市において約250名の乳幼児に経口ポリオワクチン(セービン株,以下セービンワクチンと略称)を投与し,ウイルスの感染や免疫の成立について検討した。この試験はセービンワクチンのある程度以上の規模の人体投与のわが国における最初の経験である。本試験を企てるにいたった経緯は,1960年Dr. A. B. Sabinより筆者らの一人(北岡)にセービンワクチン(Original Vaccine)が送られ,該ワクチンの日本国内における検討が依頼された。一方,長岡市ば1958年に2型ポリオの流行があり,21名の麻痺患者の発生を経験し1),以来ポリオの予防に関して市民,医師,市衛生課が強い関心をもち,新たな予防対策の導入に積極的であった。このような状況で,予防衛生研究所,長岡市衛生課,長岡市医師会の協力のもとに,長岡市に居住する乳幼児の一部に対して本ワクチンの投与を行ない,その後の検査を行なったのである。なお,投与,検体の採取は主として長岡市衛生課,長岡保健所の職員および長岡医師会の小児科医により行なわれ,検査は主として予防衛生研究所腸内ウイルス部によって遂行されたものである。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.