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HPVワクチン接種でいったいなにが起こったのか
HPVワクチンは,海外における大規模臨床試験で効果と安全性に問題がないことが確認され,2006年頃から接種が開始された.日本でも臨床試験が行われたが,安全性に関する問題は認められなかった1).子宮頸がんを予防するワクチンとのことで,その重要性が評価され,将来の定期接種化を見据えた「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」としての接種が2009年に開始された.そして,4年後の2013年4月に正式に定期接種となった.しかし,その直前の同年3月の新聞報道で,HPVワクチン接種後に重篤な副反応(広範囲に広がる痛みや歩行障害,認知機能障害など)を起こすケースがあるとの報道がなされた.これらのマスコミ報道は過熱化し,連日のように副反応報道がなされた.これに対して,厚生労働省は副反応検討部会を開き,接種後に持続的な疼痛をきたすことがあるとの理由から,その2ヵ月後に定期接種の積極的勧奨を急遽取り下げる事態となった.これは,副反応と思われる症状の発生状況等を見極めるための決定と思われた.厚生労働省はリーフレットを作成し,各自治体に注意喚起を促した(図1).このリーフレットには,「子宮頸がんワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません.接種に当たっては,有効性とリスクを理解した上で受けてください」と書かれている2).国が“勧めていないワクチン”を,誰が接種しようと思うのか,疑問に感じる内容であったが,定期接種からは外されなかった.よって,現在も対象年齢の女子は実質無料で接種が可能である.
その後,副反応検討部会は何度も開かれたが,積極的勧奨の取り下げから約7年が経過した現在も,勧奨の再開にはいたっていない.
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