講座
完全看護
小西 宏
1
1病院管理研修所
pp.29-31
発行日 1955年2月15日
Published Date 1955/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909749
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所謂「完全看護」ということ
近年我が国の病院で完全看護という言葉がしきりに用いられていますが,多くの場合それは社会保険でいう所謂「完全看護」を意味していることは申す迄もありません。現在社会保険の標準入院料は27点と定められていますが,これには診療行為以外の凡ての入院サービスが含まれるので,病院としてはこれで患者に病床を提供し,食事を与え,療養上の世話をしなければならない義務を負わされています。併しこの入院料でどれだけのサービスが可能であるかということは,これに一点単価をかけて物価と比較してみれば容易に想像のつくことです。現実の問題としてこの程度の入院料では,患者が自分の寝具を病院に持参し,食事も自己負担で補食し,更に自分で身の廻りの仕末ができない患者は誰か附添人について貰わないと療養上非常に不便を来す,という実情になつています。そこで社会保険では,この状態を緩和するため,病院が寝具を提供する場合には完全寝具料の,補食をする必要がない程度の食事を提供する場合には完全給食料を,個々に附添人をおかずとも病院の看護婦が患者の面倒をみる場合には完全看護料を病院に支払うことにして入院サービスの向上を図つているのです。併し何事によらず文字通りの「完全」を期することは決して容易なわざではありません。やつている方は完全の積りでも,やつて貰う方からいえば不満だらけということは始終経験する処です。
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