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シラキウス大学の思い出
白井 怜子
pp.42-43
発行日 1955年1月15日
Published Date 1955/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909731
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滞米13カ月の中昨年9月20日から今年の6月半迄,特別留学生としてニユーヨーク州シラキウス大学の看護教育部に籍を置いた。十有余年振りに一学生に立直つての大学生活,正味9カ月の短期間ではあつたが,数々の思い出が盡きない。1年前の今頃は始まつたばかりの各コースの宿題に追われ,図書室で日夜寸時を惜しんで辞書を片手に参考書に取組んでいた外国語で勉強することの能率の悪さをお互いにかこつたクラスメートのフランス・デンマーク南アメリカ等のナースの留学生達の顏がまざまざと浮び,勵まし合つた声がひびいて来るように感じられる。深い雪の中を家から一番遠い教室に時間ぎりぎりに馳げこんだ冬の朝,緑の丘の上で気の合つた留学生同士でピクニツクを楽しんだ春の午後,鉄のカーテンの向うから来た一人の女子留学生も交えて48ヵ国の各学部の留学生とアメリカの学生が,共々に手をとつてフオークダンスに興じた平和そのものの秋の夕べの一とき,こんな時は"昨日の敵は今日の友"というより世界の何処に人類の争いがあつたのかと不思議に思われさえした。こうしたことは思い出のほんの一つに過ぎないが,ここで一寸シラキウス大学の簡単な紹介をしたいと思う。
シラキウスはニユーヨーク州の略中央にありニユーヨーク市から早い汽車で6時間かかる。私の上陸したサンフランシスコからは2926マイル汽車では3日旅をしなければならない。
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