隨筆
伝染病棟213号室—入院ドクターのみたナース群像
pp.55-57
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909695
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K病院の伝染病練213号室,そこは「格子なき牢獄」だつた。廊下側はずつとくもりガラスではつてある。眼の高さにはちやんと楕円形にのぞき窓もきつてあつた。病人はこの室から一歩も出られない。ベツドの上に許可もなく起き上つてでもいようものなら,たちまちお叱りをこうむる。この不自由さが完全看護のシステムにのつとつた独身患者の楽天地で身に泌みてつらいことだつた。わたし達にできる抵抗は,「まるで帝王ネロじやないですか」といつて,にが笑いするほかになかつた。
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