学院便り
鶴岡市立莊内病院高等看護學院
日下部 淑子
pp.155-158
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909564
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美智子樣
果しなく拡がる荘内平野の彼方に,裳裾ひく出羽富士の真白な雄姿が,いつのまにか夕闇にうすれてきました。何かわけもわからずに引きつけられてしまいそうな靜かな気持です。ほんとうにしばらくでございました。
雪の中で櫻の蕾のふくらんでゆく音を聞きながら,そして雲の飛んだ青空に,3つ4つ開いた緋桃の蕾を数えながら,博愛の精神のもとに,重大な使命を担つた看護の道にふみ出してから約10カ月。早いものですね。まもなく新入生を迎えれば,2年生。もう上級生になるなんてなんだか恥かしいみたいです。それ程の月日を過しましたのに,まだまだ何もかも珍らしいような好奇心が湧きますもの。いいえ,一所懸命にスチユーデントナースとして努力してはいるのですが,未知の世界がどこまでも続いていて,その世界への,つきぬ不安と憧憬は,生涯のものであり,それだけに大きな希望であるのかもしれません。胸のふくらむ希望と,心をかすめる不安とのまじつたうれしさは,入学を祝つていただいた歓迎会の席からお伝えしましたが,忘れ得ぬ数々の思い出が基礎となる頁を色どつています。
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