医学のあゆみ・30
クエン酸・サイクル
杉 靖三郞
pp.45
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909527
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人間が活動するときのエネルギーの源は,主として糖の燃焼によるのだが,これが,どのような段階を経て変化してゆくのか,ということは,酸素のない条件の下では,糖の分解(解糖作用)によつて,焦性ブドー酸を経て,乳酸ができることは,比較的はやくからわかつていた。ところが,酸素のあるときに,炭酸ガスと水とに分解するのか,どのよつな過程によるのかということは,実のところまだよくわかつていなかつた。
ところで,この焦性ブドー酸の酸化経路を明らかにしたのが,イギリスのシエフイールド大学・生化学教授のクレーブス(Hans Adolf Krebs)博士である。これがクエン酸を中心とする物質の輪廻によつておこるので,これを“クエン酸・サイクル”または,“クレーブス・サイクル”とよぶ。この説は,すでに1937年頃出されたが,その正しいことが確認され最近の(1953年度)ノーベル医学。生理学賞が与えられたのである。
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