発行日 1953年3月15日
Published Date 1953/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907263
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洗濯のできるわけ
洗濯物についているよごれは,前にも述べたように複雑な成分であるが,そのうち一部分は水にとけてたやすく除かれるものもあるが,大部分は脂肪性のよごれによつて固着され,單純な水やお湯ではとれないものが多い。そこで色々な洗劑を洗濯に用いるわけである。
今石鹸を例にとつてよごれの洗いとられる經過を述べてみると,石鹸の成分は脂肪酸ナトリウムCH3CH2CH2……CH2COONaで,この左方は脂肪に親しむ親油性で,右方のCOONaが水に親しむ親水性であるため,油と水との全く相いれない物の間に立つて圖のように油を包んで水の中に散らばしてゆくのである。この作用を扶けるのが洗濯のときの揉みこする作用であつて,この機械的な作用で油が益々小さな微粒子に碎かれて水に散つてゆき,全體が白く濁つてゆくのである。これを乳化作用Emulsionficationとよんでいる。牛乳中の脂肪や蛋白質が水にとけこんでいるのと似よつた作用であつて,これが洗濯にとつて大へん重要なものである。石鹸以外の他の洗劑も作用の大小はあれ,何れもこの乳化作用で脂肪性のよごれを除くのである。
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