発行日 1953年1月15日
Published Date 1953/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907224
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わが世の春を心から謳歌出來なくとも,講和後の初の新年は何となくお芽出たい氣がすることは,世の中が曲りなりにも一應安定し,生活環境もどうやら良くなつたからであろう。殊に客商賣をしている人々が,サービスを競いだしたことは客の立場からみると,結構な時代が戻つてきたことになる,良き年の瀬であり,艮き新年でもある。
大體民主主義生活には,サービスの精神は,缺くことは出來ないものであるが,まだまだそこまで進んでおらず,サービスとは,商賣の手段程度に思つている人が大多數のようである。だからサービスと云う言葉には,やゝもすると何となくいや味がつきまとう。殊にスペシヤルサービスなどと云うと,人的接遇の面では身を犠牲にするような行爲が連想され,飲食の場合だと極めて廉價である粗惡品,或は手を抜いたものが思い浮び,醫療の面では施療が想像される。事實そうしたものにも“サービス”と云う言葉が使われている。これは必ずしも惡いとは云わないがサービスの真の意義は,そんなものでないことを,もつと徹底しておきたいものである。
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