発行日 1952年9月15日
Published Date 1952/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907129
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連日の雨が久方振りに揚つて珍らしくすがすがしい明るい朝である。顏を洗つていると宿舍の側のテニスコートから早くも2,3の人の動きと共に氣持良い程ポンポンと打合う音が澄んだ朝空に谺して聞えて來る。
今日は何時もより早目に出勤して見ると病室の窓越しに子供の疳高い泣き聲が入亂れて聞えて來る。“又喧嘩をしているナ”と心忙しく急いで病室に入ると案の定,面會室で9歳になる癲癇のA子と6歳になるこれも癲癇のB子が旺んに泣き喚きながらつかみ合いをしている。中に入つて“どうして朝早くから喧嘩しているの”と問い訊すとあれがやつた。あれがやつ左。と顔を眞赤にして泣きじやくりながらお互いを指さして相手の非を訴えるのみ,是では何時までたつても收まりがつかぬと思つたので2人を強引に引離して見たが私隙を窺つては素早くつかみ合いを始める始末,毎日繰返される出來毎ではあるが,仕方がないので嫌がるA子を18歳になるC子に托して裏庭で遊ばせて貰う事にして一應けりをつけホツとする。
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