発行日 1952年4月15日
Published Date 1952/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907036
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昭和26年7月末から10月末迄思いがけない幸運に惠まれてアメリカの看護婦學校をいくつか見學して參りました。この間時日としては僅かに3ヵ月の短い旅ではありましたが體驗した事柄は誠に種々樣々大きな智識の收獲でありました。首都ワシントンで組まれた旅程は初めての渡米であり見るもの聞くもの初經驗の私には文字通り多忙な日々でありました。1人旅にはいろいろ珍談もありますが,何處に行つても公私共に本當に皆さんから親切にしていたゞいたおかげで無事に予定のスケジュールを了えることが出來ました。ワシントンのユニオンステーションで初めて汽車の旅をした時,特に世話になつた赤帽,デイトロイトで乘り過した私を親切に元迄送りとゞけてくれたバスの運轉手,ニューヨークで偶然あつた日本語の達者なアメリカ婦人の暖い心遣い等見ず知らずの人々の親切も身に泌みて思い出されます。個人尊重,民主々義の實踐は病院や學校内は勿論のこと,バス・電車・レストラント・デパートメントストアの中或はふと行きずりの一駒にさえ,至るところで見せられて成程と思つたことでした。丁度講和前後の對日感情の最もよい時であつたせいもありましようが,日本人であるために不快を感じたことは一度もありませんでしたし,女性であることを感謝したのは度々でした。さて前おきはこれ位にして拙いながらみたまゝきいたまゝの事どもを旅程の日を追つてお話してみようと思います。
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