名詩鑑賞
故郷の空—大和田建樹
長谷川 泉
pp.54-55
発行日 1951年11月15日
Published Date 1951/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906968
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明治時代において多くの人々にうたわれた歌に「鐵道唱歌」というのがある。「三歳の童子も是を口吟す」と傳えられているくらいで,あまねく全國を風靡した。私達が東海道線に乘る時に,時代感覺の相違はあつても,時としてはふつとこの鐵道唱歌のリズムと旅立ちの感慨とが交錯して浮んでくることもある。それ程,この鐵道唱歌なるものは東海道と結びついた餘韻を今につたえて,生命を保つている。歌は「汽笛一聲新橋を」で始まる,あの人口にかいしやした歌詞である。
汽笛一聲新橋をはや我汽車は離れたり愛宕の山に入りのこる月を旅路の友として右は高輪泉岳寺四十七士の墓どころ雪は消えても消えのこる名は千載の後までも窓より近く品川の臺場も見えて波白く海のあなたにうすがすむ山は上總か房州か
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