連載 赤いコートの女―女性ホームレス物語・20
波さんの故郷
宮下 忠子
1
1コミュニティワーカー制度を考える会
pp.328-329
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100291
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福岡県にある某炭鉱街に育った波さん.
波さんが小学校1年生のとき,それは1963(昭和38)年11月9日,午後3時15分過ぎ,突如,大爆音が市街に響き渡った.やがて黒煙が空を覆う.三井三池工業所三河坑が出所だった.大爆音は,有明海の海面下約350mの炭鉱内で起きた.そのとき在坑者は1,994人で,爆死,あるいは一酸化炭素中毒,罹災等で,ほとんどが死亡している.石炭に代わり石油等,新たなエネルギー資源が台頭してきたときでもあった.エネルギー資源としての石炭の需要は,激減していった.その三井三池鉱業所は,1997(平成9)年3月29日に閉山になっている.
2002(平成14)年10月,お彼岸の日,私は熊本にある実母の墓参りに行った.墓参りを済ませた後,波さんの故郷であるこの炭鉱の街を訪れていた.同所には,2度目の旅であった.1度目は,早春の頃,波さんが小学1年生の時の担任の先生にお会いできた.波さんがしっかりと記憶している,原先生である.
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