コーヒーブレイク
誰か故郷を
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.474
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101190
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北朝鮮から5人の生存者が帰国してから1か月余がたった.その間目まぐるしく事態が変転し,家族も含めた永住帰国に向けて日朝交渉がもたれつつある.新潟に帰った3人の方の報道も連日私達の耳に届くが,故郷や家族への感謝と愛着,北朝鮮に残した家族への切ない思いなど悉く私達の共感と同情を呼ぶことのみである.死亡したとされている横田さんもどんなに故郷新潟と両親への切ない思慕で毎日を過ごしたかと思うと涙せざるをえない.
戦時中異国で戦いに明け暮れた日本兵の一番の愛唱歌は“誰か故郷を思わざる”であったとよく聞いた.古賀政男のメロディも秀抜であるが,昨今の歌の文句と違った“思わざる”といった古い言葉が,日本人に共感されたのでないかと気づいた.私は福島の田舎に生まれ,大学卒までが故郷で過ごした年月であるが,その後長い新潟の星の下で常に心に在ったのは幼少時駆け廻った故郷の平凡な山河と家族との風景にほかならない.しばし私の故郷の思い出を述べたい.
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