発行日 1951年3月15日
Published Date 1951/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906816
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ニューヨークやワシントンのような大都會,天に突きさゝるような槍のように細長い建物がそびえ立つて,天日なおくらしと感ずることがある。地面は自動車やバスの高速度な機關がすき間もなく飛びまわつている。タイムズスクエーアあたりはネオン輝く下を夜の10時頃から却つて人通りが多くなり曉にかけて歩道を行く足音は減少しない。見事ではあるが殺風景だなと思うと,隨分高い建物の下の鋪道の軒下で鳩に穀物をやつている男を見た。バラリと穀物を蒔きちらす,鳩のむれがさつと降りてくる。手のひらに麥をのせてさし出すと鳩が首を上下させながらその手のひらに上つてくる。小鳥を愛する風俗は面白いと思つた。しかしこんなことは淺草の觀音さまへ行けば珍らしくないと思つた。町角の廣場に半町四方位の木を植えたり騎馬姿の銅像を置いた所がある。多くは建國の名士を記念した廣場だ。これを斜に横切つて歩くといくらか近道にもなる。ふと見るとリスが二匹遊んでいる。人影を見ても逃げない。稻荷神社の前の置物の狐のように座つたリスが何やら樂しそうに食物を探しているのは惡くない。又國會圖書館の前の自動車置場の自動車の間に平氣でリスが遊んでいること,なお東京の町で雀を見るようであつたのも面白かつた,雀や烏は我々も見馴れていたが栗鼠となると愛嬌があつて一種の感動を覺えた。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.