発行日 1950年7月15日
Published Date 1950/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906672
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「彼奴はこの社會の癌だ」などと人を批評する言葉が使われます。こんな時に癌と云われる人間は,社會とどんな關係に立つているか考えて見ましよう。
第一の特徴は,それは社會の目的に叶つた統制を受けようとしないことです。法網を潜り,社會の善意を逆用して私慾を充しているのです。第二は,それが放つて置けば,氣隨氣儘にどしどし,はびこつて大きくなることです。所謂惡人のボスになつて,何々組がが社會に横行します。第三に輩下がふえると他の地方にまで,親分乾分の盃を交わした組をつくつて,終には全國に繩張をつくつてしまいます。第四に,このやうな,はびこりようを默つて見ていると,社會は遂いに破壞されて了います。
「癌」という字は,現在ではひろく惡性の腫瘍を意味してつかわれているのですが,醫學の面で一體どのような意味合いをもつているのか,一向に御存じない人でも,癌という言葉をこのように,含みのある意味に使っているのです。社會の癌と醫學上の癌とは次ぎのように,細い點までよく似た特徴を有つています。
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