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社會と病院
久松 榮一郞
1
1中央大學
pp.4-7
発行日 1952年3月1日
Published Date 1952/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200451
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私は昨年の9月から12月まで,アメリカの大學を視察するよい機會をもつことが出來ました。專ら體育,ヘルス・サービスを中心に見て廻つたのでありますが,大學のあり方がわが國と非常に違つていることが,私の強い印象でありました。その相違はなにから來るか,なかなか難しいことでありましようが,私は社會の成り立ちと社會をつくつている人々の考え方が,その原因ではなかろうかと獨りで考えた次第でした。
アメリカの社會は,どの樣につくられているかということは,到底私には表現しにくいことでありますが,デモクラシーの社會であると一言にして申したなら,そう非難はうけないでしよう。然らばデモクラシーの社會とはどんなものかと細目にわたつて表して行こうとなりますと,なかなか難しいことになります。私は勝手に,私なりに想像をたくましくしたのであります。アメリカに始めに渡つてきた人達は,キリスト教的信仰をもち,互に兄弟のように相愛する氣持ちに満ちていたと思います。その人達が,あの廣い大陸にぶつつかり,その生活を開拓してゆくことは,並大抵のことではなかつたと思います。耕作をするのにも,家を建てるのにも,充分の苦難をなめたことでしよう。この大自然の中で,生活を切り開いてゆくためには,もともと信仰に厚く,兄弟の愛情をもつていた人々ですから,當然いつも相談し,力をあわせて彼等の仕事をすすめて行つたと想像されます。
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