看護學講座
外科看護
湯本 きみ
pp.45-51
発行日 1947年10月15日
Published Date 1947/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906249
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手術後合併症
手術後虚脱(postoperativesoch)外科手術後に患者の血液循環が急に惡くなり危險状態に陷ることがある。之を手術後Shock(手術後虚脱と謂ふ)。
之は,主に血管系が甚しく,弛緩擴張したために,血液が,腹部内臓或は,下半身に澁帶して,心臟に歸らないので,心臟が空ポンプの現象を起した結果なのである。腦へ行く血液が少くなるので,意識は,朦朧となり,すべての感覺が鈍る。皮膚は冷たく汗ばみ,唇は匍萄色になり,脈搏は速く弱い,呼吸は淺くて,速い,體温は正常以下に下る。血壓は低く,90-80時に尚低い。擴張時壓は殊更に低い。斯の樣な危險な状態に,陷る理由は,色々と論じられて居るが,一般の外傷に依るシヨック(Trauraticshock)と同じ樣な原因で起るのだけれども,手術の場合には,麻醉,多少,失血,細菌感染中毒なども,血管の障碍を増惡する誘因となる意味で,多少趣を異にして居る。之等は殆んど避け難いものであるが馴れた手術,或は取扱ふ人の注意で避け得るものである。患者が出血を見たり,手術室内の物々しい光影,見馴れない器機を用ひて手術が行はれる情景を見たり,機械の音を聞いたり,他の手術患者の,うめき聲を聞いたりして激しい,精神的のシヨックを受け,其れが手術後シヨックを増惡することが少くない。
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