- 文献概要
友人の東京高橋教授K君が榮養失調で喪くなつたが,ゲーテ研究者であり眞面目な學者であつたのに實に惜じい事をした。同君はプユリタン的性格がら闇市を嫌ひ配給生活で頑張つたのだが,今の時勢に抗しかねたのであろう。然し生活上の苦しい現實については吾々も大いに考へさせられるものがある。
此樣な勉學たも不適な時代に學生生活を營む人々に對して全く同情に堪へぬが,學業を放業されても困る,お氣の毒であるが齒を喰ひしばつて頑張つて頂き度い。考へ樣によつては再建日本の柱石となるべき諸姉が貴重な基礎を築くための大切な時機であるからである。そして禍を轉じて福となす事が出來る。勉學には何と云つても24,5歳迄が其好機であつて,それ以後は記憶力が減退して智識の吸收には年と共に段々困難を伴ふものである.
Copyright © 1947, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.