連載 やわらかいからだのはなし・2
魔女の身体
北澤 一利
1
KAZUTOSHI KITAZAWA
1
1北海道教育大学(健康管理政策論)
pp.870-873
発行日 2001年9月1日
Published Date 2001/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906058
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異端者の運命
近代医学が正しいと確信している人間の「姿」,解剖学的,生理学的「身体」を疑うことは,この連載のひとつのテーマなのですが,ひょっとすると,この企画には多少の危険が伴うかもしれません.社会で広く信じられている教義に従わなかったために,命を落とした例がたくさんあるからです.
1656年5月14日,ボストンに住む未亡人アン・ヒベンス婦人は,法廷で判事の前に立たされました.彼女は魔女であると告発されて裁判にかけられたのです.判決を行なう陪審員の中には,彼女の古くからの顔なじみも何人か含まれています.彼女は無罪を主張しましたが,ボストン高等裁判所は有罪を宣告します.そして,この5週間後の6月19日,彼女は魔法を使った罪で処刑(絞首刑)されたのです1).
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