連載 やわらかいからだのはなし・4
妊婦の身体
北澤 一利
1
KAZUTOSHI KITAZAWA
1
1北海道教育大学(健康管理政策論)
pp.1066-1069
発行日 2001年11月1日
Published Date 2001/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903861
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医学研究をめぐる文化的相違
私たちの身体は,自然法則に支配されるというより,時代を支配する文化や価値観によって変形されたり加工されます.私はこれまで3回にわたり,中世の魔女狩りや18世紀の解剖図など,過去の実例をもとにこれを説明してきました.しかし,時代や文化によって身体が浸食されるというのは,必ずしも過去の時代の人々の「無知」に起因するものではありません.その証拠に,これは科学が発達した現在でも見られるからです.最近では政治的,経済的理由が,身体を自然のままに放置することを妨げるようになりました.
アメリカでブッシュ大統領が8月半ば,胚の幹細胞を利用した科学研究に助成金を認めると発表しました.幹細胞はこれまで中絶された胎児の細胞や解剖用に献体された死体の細胞から培養されていました.これを使うと人間の限られた細胞や組織を人工的に作ることができます.
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