連載 考える
看護すること—てつがく自由自在【実況中継編】・9
タマキ邸,訪問—じぶんのことはじぶんがいちばんよく知ってるって,ほんと?
満田 愛
1
1大阪大学大学院臨床哲学研究室
pp.862-865
発行日 1999年9月1日
Published Date 1999/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905928
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きょうはトオルの大学の友だちを招いてのホームパーティー.月6万円のおんぼろ一軒家も,こんなときには重宝する.昼間はまだ蝉の声の残るこの庭も,するすると夕暮れどきをむかえた.残暑は今年もきびしい.しっかり冷えたビールを片手に庭に出したテーブルを囲む.
タマキがトオルの大学に行くようになって1か月.何人か友だちもでき,そのなかでもタマキと同じ歳の藤埜東子とはよく会って話をするようになった.タマキとは違う病院だが,彼女も看護婦をしている.大学へは去年からずっと顔を出していて,いまではすっかりとけ込んで授業でもよく発言をする,とっても元気な子.タマキと同様,看護の仕事はまだまだ新米だが,彼女もまたどこかにタマキのかんじているのとおなじようなひっかかりを日々のルーティーンのなかで抱えているようだった.
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