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アルコホリズムの社会学
早坂 裕子
1
1東北福祉大学社会福祉学部
pp.280-281
発行日 1997年3月1日
Published Date 1997/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905304
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「スティグマ」「セルフヘルプグループ」「医療化」などへの社会学的なアプローチによって見えてきたものとは
アルコホリズム(alcoholism)とは,自由主義(liberalism)や社会主義(socialism)と同様に「アルコール主義」とでも言うべき,「アルコールを最も大切なものと考える態度や生き方という意味である」と著者は述べている.この定義は興味深い.評者の私は,この場合のイズム(ism)を,主義という方針や強い意志の表出よりはむしろシニシズム(cynicism)に見られるような,自然に,あるいは経験的に身についた「特質」に近いものとしてとらえていた.
ともあれ,「アルコホリズム」という用語を著者が使っているのは,アルコール中毒=社会病理という思い込みからまず自由になるためであり,アルコール依存症という医学的な用語も避ける必要があったからである.そして,アルコール類に対し意識的にも行動的にも至近距離にある人々のことを,ニュートラルな立場で論じていこうとする.
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