特集 医療と経済格差
イギリスにおける医療格差問題の動向
早坂 裕子
1
1新潟青陵大学看護福祉心理学部
pp.641-644
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100352
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■これまでの状況と対応
イギリスにおける医療・健康度の格差問題と是正への取り組みを振り返るとき,“The Black Report”1) に触れないわけにはかない.同国では,1977 年に国家的事業としてサー・ダグラス・ブラックを委員長とする特任委員会が結成され,健康度と社会経済状況との関連についての大規模調査・研究が行われた.
予想をはるかに越えた健康度の格差の大きさが明らかにされたその報告書は “The Black Report” と呼ばれる.それは国内はもとより,他の先進諸国へも大きな衝撃を与えた.基本的に国民の誰もがアクセスでき,福祉国家の医療体制として 1 つのモデルといわれていた NHS(国民保健サービス.保険ではなく税金により運営している.したがって患者の窓口負担はない)の下でも大きな格差があったのである2).
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