連載 —海外文献紹介—Current Nursingピックアップ・26
看護婦と終末期患者との相互作用—Samarelの研究から
吉田 みつ子
1
1日本赤十字看護大学大学院看護学研究科博士後期課程
pp.466-469
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905087
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
ホスピスケアは「人間としての尊厳ある死」や「家族も含めた患者の全人的ケア」などの理念を掲げ,日本でも10年余りが経過した.そしていま,わが国でのホスピス運動はその啓蒙期をひとまず終え,これからはその実践方法や内容など現状についてのデータを集め,それを検討し今後の進むべき方向について考えていくことが必要な時期を迎えている.しかし,厚生省および地方自治体の認可を受けている緩和ケア病棟を持つ施設は全国でいまだ18か所であり(平成7年3月現在),圧倒的大多数の終末期患者が一般病棟で,急性期の患者のかたわらで残りの人生を過ごし亡くなっていくというのが現状である.
回復の見込みがなく死を目の前にした患者と,手術を終えて回復を待つ患者が同居している病棟で,看護婦はそれぞれの患者とどのようなやり取りをし,なにを考え感じているのだろうか.急性期や慢性期患者と終末期患者がともにいる分散型のホスピスベッド*を持つ病棟でのフィールドワークによって,看護婦とこの2つのタイプの患者との間で行なわれている相互作用に注目したNeldaSamarelの研究1)を紹介しながら,終末期患者と看護婦との相互作用について考えてみたい.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.