連載 看護ボヘミアン—出会いと発見のつれづれ・10
風立ちぬ—(前編)
林 千冬
1
1東京大学大学院医学系研究科博士課程
pp.670-671
発行日 1994年7月1日
Published Date 1994/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904596
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ロマンス・グレーの君
吉田泰三さん,64歳.無造作にかきあげた髪は,少し長めのロマンス・グレー.長身を折り曲げるようにして,いつもベッドで文芸雑誌を読みふけっていた姿が忘れられない.舞台は相変わらず「生活保護専門病院」.だけど彼の姿だけは,まるで一枚の美しい絵のように蘇ってくる(他の患者さんたち,ユルセ!).
のちに思えば,私の彼への気持ちは限りなく“恋”に近かったのかもしれない.その証拠に,それ以来私はなぜかロマンス・グレーの男性には滅法弱いのだ.
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