連載 買いたい新書
高齢社会における生活大国をめざして 経済の目を通して見る―厚生行政の経済学—病院経営・医薬品・有科老人ホーム
杉山 克己
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.562-563
発行日 1994年6月1日
Published Date 1994/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904570
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「国民の努力の成果である経済発展の目的は,本来,攻撃的な輸出ではなく,生活大国の実現にあるはずだ」(p231).
先日,韓国からの留学生とともに東京郊外を走る私鉄に乗っていた時のこと,「初めて日本に来た時,経済大国日本の人々はどんな生活をしているのだろうと思っていた.成田からの電車に乗って外を見ると,小さくて立派とも思えない家が並んでいる.それでも,中は立派かもしれないと思っていた.けれども,東京で暮らし,日本人の友人もできて家に招かれるようになってみると,やはり思っていたのと違ってみすぼらしい.どうしてなのか?」と尋ねられた.冒頭に引用した部分を読んだ時,この時の彼の疑問を思い出してしまった.実は,日本人たる私も,そして,おそらくは多くの読者も同じことを感じているのではないだろうか.しかし,私も含めてどれほどの人がこのことを真剣に考え,検討し,そして具体的な打開策を持っているだろう.正直に言って,この時のこの疑問に,私は十分に答えることができなかった.いくつか細かいことは指摘できたのだけれど…….
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