特集 伝えたい—伝わらない—患者と医療者のコミュニケーション
COMLに届いた手紙より—これは,COMLに届いた看護婦,家族,医師からの実際の手紙をもとに,今回の医療フォーラム用に再構成したものです
pp.412-415
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904533
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看護婦からの手紙
私はナースになって15年,今は内科病棟に勤めています.これまで無我夢中で仕事をしてきました.ドクターよりも患者さんの身近にいるナースとして,患者さんから送られる信号をキャッチした上で,ドクターと協力して治療をしていくのが理想だと思います.でも,現実には忙しく,作業を進めるだけで精一杯.患者さんと落ち着いて話ができないばかりか,ドクターの中には私たちに上下関係を押しつけてくる人もいます.私たちが本当にやりたいことができているとはとても言えない手探り状態ですが,少しでもよりよい看護をめざしたいと思っています.
ところが先日,とてもショックなことが起こりました.ある40代後半の男性が糖尿病で入院してきたのですが,一目でうつ病を疑う患者さんなのです.うつの症状はひどく,糖尿病の治療に専念できる状況ではないと私たちは判断しました.ドクターには,「どうして内科で引き受けたのですか.専門の科に送るべきじゃないですか」と訴えましたが,「検査をしてからでないと何とも言えないよ」と取り合ってもらえませんでした.患者さんは集中力がなく,ドクターの説明も十分に飲み込めないどころか,血糖値を測ることもままならない状況です.患者さんの奥さんは,ドクターの前ではオドオドするばかりで,私たちに,「以前の夫とは別人のようです.何とかよろしくお願いします」と懇願されます.
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