映画の時間
―ある日,かつて少女だった私から手紙が届いた―マーガレットと素敵な何か
桜山 豊夫
pp.689
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102220
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現代の事物を未来に残す目的で製作されるタイムカプセル.最近は,未来の同窓会の折に開くため,卒業式などで文集や写真を入れた「タイムカプセル」を残すことも,よく行われているようです.映画「20世紀少年」でも,そんなタイムカプセルが物語の重要な要素でした.また「未来への手紙」というのもあります.何年後かに配達されることを前提に自分宛の手紙を投函するのですが,確実に配達されるためには,いろいろ工夫も必要です.今月ご紹介する「マーガレットと素敵な何か」の主人公は,将来の自分に確実に配達されるよう,手紙を公証人に託します.
40歳の誕生日,日本で言えばアラフォーの主人公マーガレットは,パリでキャリア・ウーマンとして忙しい日々を送っています.折しも原子力プラントを中国へ売り込もうとしています(現在,東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故対応に追われているわが国にとっては,やや複雑な思いも感じますが…).そこへ南フランスの片田舎,彼女の故郷でもあるソウ村の,公証人と名乗る老人が書類を届けに現れます.ソウ村には教会と球戯場がひとつずつあり,それに公証人がひとりいます.公証人は書類を主人公に手渡しながら,「私を覚えていないのか」と謎めいた言葉を残して去ります.ミステリーのような幕開けです.
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