連載 買いたい新書【新連載】
現代のスティグマ—ハンセン病・精神病・エイズ・難病の艱難
杉山 克己
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.74-75
発行日 1994年1月1日
Published Date 1994/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904451
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この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし
病んでいる人,障害を持っている人も等しく1人の人間であり,喜怒哀楽を持ち,生活をしている.ただ,病や障害を持ちながら生きているだけである.こんな当たり前のことをこの国ではまだ言い続けなければならないのだろうか.
この本の著者は第2次世界大戦中の50年前,医学生に成り立てのころに,当時圧倒的な少数派であったハンセン病(医学用語としては「らい」)の絶対隔離反対の立場を取っていた,京都大学の小笠原登氏のもとでボランティア活動をしている.その後,まだ死病であり「他人にうつす」と恐れられていた結核を患ってもいる.こうした経験からであろうか,厚生省の官僚となって後も患者やその家族たちとの交流がとだえることはなかったようである.こうした著者のヒューマンな心情が随所で伝わってくる本である.
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