マイオピニオン
ハンセン病から学んだこと
山口 さやか
1
Sayaka YAMAGUCHI
1
1琉球大学病院皮膚科
pp.480-481
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206088
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1. はじめに
現在の日本ではHansen(ハンセン)病の発症患者は年間数人で,そのほとんどが感染地域からの渡航居住者であり,日本人の発症はきわめて稀な疾患です.世界の状況は,WHO(世界保健機関)推奨の多剤併用療法の普及などにより有病者数,新規発症数は減少していますが,ここ数年,新規発症数は年間20万人,というところで頭打ちの状態になっています.
ハンセン病は抗酸菌の1種であるらい菌が,真皮マクロファージや末梢神経に細胞内寄生し,ゆっくり増殖し発症します.感染経路は,まだ明確ではありませんが,経鼻感染と考えられています.らい菌の潜伏期間は数年から数十年と長期にわたります.らい菌の感染力は非常に弱く,接触しても95%の人は自然免疫により発症には至らず,小児期,低栄養状態,多菌型患者との濃厚接触など特殊な条件下でのみ感染が成立します.実際に,成人後に感染し発症に至ることは非常に稀です.宿主自身のらい菌に対する免疫力が発症に大きく影響し,皮疹の性状や数,神経障害の程度,病理組織所見,組織内の菌数の多い・少ない,など病型が非常に多様であるのが特徴です.
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