いい本見つけた!
—浦河べてるの家 著—「べてるの家の「非」援助論—そのままでいいと思えるための25章」
井部 俊子
1
1聖路加国際病院
pp.868-869
発行日 2002年9月1日
Published Date 2002/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904042
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常識が逆転する,「そのままでいい」と思える
本書にはのっけからひきずり込まれる.べてるのメンバーを社員として雇用している会社の社長の序文に,「ゴミ処理の仕事や,ホームセンターやスーパーから委託を受けている配送の仕事」をしてもらっているとしたあと,近年いちばん困ったメンバーであるA君という分裂病の青年が登場する.彼は「出勤時刻を守れないし,途中で帰ってしまうこともあるし,何を話しているのかよくわからないことも多い」うえに,「やっかいなことに,彼は勤労意欲満々というめずらしいメンバーで,なかなか休んでもらうことができず,病状が徐々に悪くなり,皆がかなり参って」しまうのだという.社長として,「人を選ぶということにひどくいい加減な人間になってしまった」と述懐するのである。しかし,社長は彼らに辞めてもらうことはしない.「人との出会いは選べない」からである.そして結果的に,彼らを巻き込んだ商売は繁盛しているのである.背中がぽっとあたたかくなるような身体感覚があり,何はさておき読み進みたくなる.
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