連載 聴こえんゾ!・1【新連載】
痛いじゃん!
山内 しのぶ
pp.776-779
発行日 2002年8月1日
Published Date 2002/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904027
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交通事故にあった.10年前のことである.加害者は,自転車に乗った高校生らしき男性.事故発生時の現場の状況は以下のとおり.日が沈み,あたりが徐々に暗くなっていこうとしているとき(いわゆるたそがれどき),視界やや不良.田んぼが広がり,家が点在する農村部を通る,見通しのよい片側一車線の一本道.歩道と車道の境界はガードレールになっている.歩道は,大人が2人並んで歩ける位の幅.車道の交通量は多いが,事故発生時の歩道には,被害者とその友人以外に歩行者はいなかった.
10年前の夏のあるたそがれどき,友人と2人で家路を急いでいた.遊び疲れていた私たちは,無言で,私が前,友人が後ろとほぼ一列になって歩道を歩いていた.いきなりふくらはぎに衝撃を感じた.思わずよろけた.びっくりしてふり返った私の目に,自転車に乗った高校生らしき男性が映った.その男性は,無表情で私になにやら言って走り去った.何が起こったのか理解できずに立ち尽くしていた私に,友人が,大丈夫?と言いながら近寄ってきた.ふくらはぎがビリビリ痛くなってきた頃に,ようやく今起こったことが理解できてきた.心配そうな,びっくりしたような顔つきの友人に,うん大丈夫だよと答えながら,モーレツに頭に血がのぼってきた.すでに見えなくなっている自転車に向かって,心の中で,このヤロウ!クソガキ!と毒づいた.
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