特集 くじけてばかりはいられない 糖尿病看護の知恵袋
運動療法のトラブルポイント
石黒 友康
1
1聖マリアンナ医科大学東横病院
pp.38-42
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100898
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糖尿病に対する運動療法は食事療法と並び,とりわけ2型糖尿病治療の場合においてはもっとも基本となる治療手段であり,その目的は代謝の安定と合併症の予防,および健康の維持にある.代謝異常に対する運動療法の効果は単独ではなかなか得られにくいが,運動の直接的な効果としては,骨格筋のインスリン感受性の改善を介した血糖コントロールの改善があげられる.また食事療法の効果を土台とした条件で肥満の改善,高血圧・高脂血症等の動脈硬化性疾患の改善,および発症リスクの低下などが運動療法の効果としてあげられる.また1型糖尿病においては,運動による血糖調節機構を理解することにより,健常者と同様にスポーツを楽しむことが可能であり,この点は治療的意義が強調される2型糖尿病の運動とやや性格は異なる.
さてこのように運動療法は糖尿病治療において重要な役割を担っているわけであるが,食事療法と同様現実的には時間的,あるいは物理的に,時には仕事などの社会的要因により,その導入や実施が困難となることはしばしば認められる.したがって療養指導者の運動(療法)に対する適切な動機づけ(お手伝い),あるいは実施継続に際しての具体的なプランニング(工夫や提案)は,治療の過程で極めて重要な位置を占めているといえる.
そこで本稿ではまず「運動」について考え,ついで運動療法導入に際して,しばしば患者が口にし日頃遭遇することの多い問題点について解決の糸口を探りたい.
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