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舛甚 八戸市立市民病院の内分泌糖尿病科の積極的な取り組みは,2002年4月に師長として赴任してきた私にとって,とても新鮮であり,また感心するところの多いものでした.本日は,この5年間の事例検討を交えて,当院の糖尿病看護が現時点に至る道のりを聞きながら,どうすれば「ナースの力でここまでできる」のかを考えていきたいと思います.
なぜ再入院の患者さんは謝るのか
長嶺 当科の入院患者には,再入院の方が3割近くいます.彼らの多くは,「いろいろ教えてもらったのにまた来てしまうことになりました.すみません」と,すごく低姿勢で来院してくるのですが,それがなぜなのか,みんなつねづね疑問に感じていました.もしかしたら,私たちのかかわりが,患者さんをこういう姿にしているのかもしれない,そう考えたのが,私たちの取り組みのきっかけです.
川野 取り組みをはじめた当時は,血糖コントロール目的で教育入院してくる患者さんに対する看護師の役割は知識提供であり,コントロールがうまくいかないのは患者さんの理解不足と考えていました.でも,再入院の患者さんの話を聞いてみると,実は知識は十分に持っていることがわかります.
知識があって,身体に異常もなく,行動力がないわけでもないのに,なぜできないのかという問題意識で事例研究をやっていくうちに,「患者個人の考え方や感情状態が,行動に強く作用する」,ということがわかってきました.ちょうどその頃,石井均先生(天理よろづ相談所病院)の「糖尿病診断のビリーフモデルが,患者さんの糖尿病治療に対する思いを漏れなく聞き出すための道具になる」という考えに出会い,「PAID」註1)や「DMビリーフ」註2)という糖尿病に対する考え方や行動のし方,感情状態をアセスメントするためのツールを使ってみることになりました.
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