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石井 糖尿病患者教育でもっとも大切なことの1つが,患者さんを多面的に見る視点.今回はナース2人が持ち寄った困難事例について,医師,管理栄養士,理学療法士が参加して多職種で検討していきたいと思います.
事例1 食事がコントロールできない
事例提供者:船田仁美
患者:47歳,男性
診断名:2型糖尿病
既往歴:高脂血症
家族構成:妻と3人の子どもの5人同居
職業:信用金庫勤務.デスクワークと営業
身体所見:身長172cm,体重68.6kg,BMI=23
家族歴:母(高脂血症)
経過:
37歳時,会社の健康診断で血糖上昇を指摘され,他院にて再検査後,2型糖尿病と診断.定期通院していたが2年前より治療中断していた.当時,HbA1Cが8‐9%台,治療中断した翌年の健康診断でも空腹時血糖が230mg/dlと高値であったが放置していた.
今回,風邪様症状と口渇から,本人が血糖の上昇を疑い,当クリニック受診となった.仕事中,出先で出されたお茶菓子や軽食を断れないと話していたほか,口渇時にはコーラなど清涼飲料水の飲用もみられ,血糖上昇に拍車をかけたものと思われた.検査結果から他院へインスリン導入および教育入院となり,退院後当クリニックでフォローとなった.
勤務再開にあたって経口血糖降下薬への変更の希望があったが,その後体重増加のためインスリン量も増加,加えて腹部症状の副作用によりα-GI,およびBG剤の服用ができない状態になったため,再度指導を行なった.
船田 運動は毎日1時間弱のウォーキングをしているということです.今回,1600kcalの食事療法導入後は,自己血糖測定で,血糖の変動もつかめてきたという発言もありましたが,油物の摂り方が難しかったり,どうしても子どもたちとの間食がやめられないということで,逸脱,再発を繰り返している状態が続いています.血糖のコントロールもHbA1Cが8%台と不良が続いています.
石井 ちょうど働き盛りで,仕事上で食べ物を出してもらったり誘惑が非常に多い状況にあって,社会的にもそれをなかなか断りにくいのでしょうね.本人が自覚している問題としては,どうしても油物を食べてしまうことと,お子さんとの間食がやめられないということですね.
船田 はい.夕食前に我慢できずに間食してしまうのですが,「せんべいを食べるのはご飯を2膳ぐらい食べるのと同じことだよね」と自覚はされているように思います.
尾形 油の摂り方が問題になっていますが,料理法など,家族への教育はされたのでしょうか.
船田 奥さんと一緒に,食事の話は聞いていただいたのですが,「子どもたちと一緒の食事をするとどうしても油物が多くなってしまう」ということでした.
石井 食事ではそういう問題点がありますが,運動に関しては毎日夕食後に1時間歩いているし,自己血糖値測定もインスリンもきちんとやっていて,やる気はありそうですよね.ではまず,食事療法の問題から考えてみましょう.
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