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看護における生活指導の目的は,患者の行動や態度,ライフスタイルに目に見える変化をもたらすための積極的なプロセスである.ここでいうプロセスとは,患者が今の健康状態を維持したり向上させるために,どのようにしたらよいかを学ぶための援助を目的とした,一連の行為や出来事を指している.口腔ケアにおける看護師の指導は,口腔の健康を通じて全人的な健康を維持・改善するという観点から重要な位置を占めている.口腔乾燥症に対するケアは状態別の個別ケアとして位置づけられるが,あたり前の生活を取り戻すためのケアを学習することを支えるのが指導のポイントである.
生活指導のプロセス(図1)
患者や家族の学習者としてのニーズのアセスメントにもとづいて指導の内容と方法を確認する.口腔乾燥症は,患者の苦痛の割には家族や周囲の者の理解が不足する傾向がある.そのため看護師は,日常生活のなかに口腔ケアを定着させ,口腔乾燥を軽減することがQOLを向上させることになることを説明する能力と,生活のなかで具体的に口腔ケアの時間や方法を見出していく能力が問われる.
口腔乾燥を予防したり軽減することは,病状の安定,笑顔が見られる,言葉数が多くなる,食欲が出る,家族との対話ができる,よく噛んで食べることができる,といったQOLの向上や健康改善をまねき,本人や家族の喜びにつながる.看護師は専門的立場から生活全般を見渡した助言を行ない,目標に対して看護師,本人,家族が責任を分かち合いつつ行動できるよう進める.最近はクリニカルパスを取り入れている病院も増加している.口腔乾燥についても入院直後にアセスメントを行ない,退院までのプランに,生活指導を組み入れておくのも効果的である.
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