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閉経を挟む前後の約10年間を更年期と定義している.したがって,更年期医療という用語は更年期において発症する症状や疾患を取り扱う医療と言えるが,最近では更年期以降に発症する疾患を治療対象にしており,またその対象疾患も精神疾患から身体疾患に至るまでと,極めて広範囲にわたる医療を意味している.このため,更年期医療の対象疾患も多彩であり,そのための問題も少なくない.例えば更年期障害は更年期の代表的な疾患であるにもかかわらず,症状の程度が患者の主観に左右されるために定量性に乏しく,さらにはその定義においてすら患者側と医療者側,さらには医療者間でもしばしばその解釈が異なるなどである.一方,更年期には卵巣機能の低下と廃絶がみられるため,女性ホルモン,特にエストロゲンの低下や欠乏に起因する様々な臓器や組織の機能低下がみられることが明らかにされてきた.そこで,更年期医療もエストロゲン欠乏の観点から評価することが求められ,その結果,現在では更年期医療はエストロゲン欠落に基づく急性症状,エストロゲン欠落の慢性症状もしくは疾患およびそれ以外の症状(疾患)とに区別して理解され,取り扱われている.
さて,エストロゲン欠乏の急性症状の代表疾患は前述の更年期障害である.これには症状を説明できる明らかな器質的異常を伴わない,いわゆる不定愁訴として認識されていたものも含まれる.不定愁訴には,うつやいらいらなどの精神症状から,頭痛,めまい,動悸,あるいは食欲低下など脳疾患,循環器疾患,消化器疾患など,時に生命予後を左右する疾患の存在によって発症する症状も多数含まれるために,更年期障害の診断には鑑別診断,除外診断が必須である.そのためには複数の検査法の導入が必要となるが,いかにして簡便かつ効率的な検査法を選択し応用できるかが,確実な診断を行ううえでの鍵となる.
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