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はじめに
私たちの病棟では,4年前より2年生の基礎看護学実習と3年生の成人看護学実習を受け入れていたが,2年前,大学のカリキュラム改革に伴い,4年生の総合実習も受け入れることになった.
初めて総合実習を受け入れることが決まったときは,実習が始まる前から実習指導者である私も含め,病棟スタッフ全員がとまどいと不安をもっていた.「大学側が望んでいる成果が得られる実習環境が果たしてつくれるのか」「スタッフの増員なしで複数の患者を受け持つ学生を指導するのは,スタッフの負担が大きいのではないか」「忙しい状況で,事故を起こさずにより実践的な実習を行なわせることができるのか」「今までより長くなる3週間の実習は患者への負担となるのではないか」など,初めての試みに対するとまどいや不安は大きく,それは総合実習の受け入れに対する抵抗感ともなっていた.
しかし,実際に始まってみると大きな混乱もなく,スムーズに実習は進み,実習前に私たちが抱いていた不安やとまどいほど大変なものではなかった.それよりもむしろ,総合実習を受け入れたことで病棟では新たな取り組みができ,それによりスタッフも変化し,結果として病棟として得るものは大きかったと言える.また,実習に来た学生にもこれまでの実習では見られなかった変化が読みとれ,全体を通して学生にも病棟にも満足のいく実習となった.
さらに,初めて総合実習を受け入れた翌年4月,当病棟で総合実習を受けた学生が新人看護師として病棟に配属されてきて,「ここで総合実習を経験して,この病棟で働きたいと思った」という言葉を聞いたときには,本当に嬉しく,スタッフ全員が「やった! 総合実習をやってよかった」と感じることができた.
こう感じることができたのはなぜだろうか? 私たちにとっても満足のいく,やってよかったと思える実習になったのには,何があるのだろう? 振り返り,考えてみたい.
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